令和元年度(第20回)
民間部門農林水産研究開発功績者表彰
農林水産業その他関連産業に関する研究開発に関して優れた功績をあげた民間企業や農林漁業者に対して、農林水産大臣賞、農林水産技術会議会長賞、JATAFF会長賞を授与するとともに、農林水産大臣賞受賞者による受賞講演を実施します。
【農林水産大臣賞】
日持ちと輸送性に優れたトルコギキョウ品種の開発
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トルコギキョウの品種開発において、世界初となる雄性不稔を利用した花粉の出ないトルコギキョウの開発、また変形雌ずいを持つ多様な花型、花径、適応作型の異なるトルコギキョウを開発し、特に夏の高温期など日持ちが短くなる季節においても、日持ちの長い切り花を提供することが可能となり、消費拡大に大きく貢献した。
また、日持ちの良い花であるという認知度が世界的に高まり、世界中におけるトルコギキョウの切り花生産及び消費拡大に寄与しており、農産物輸出促進にも多大に貢献している。
【農林水産技術会議会長賞】(民間企業部門)
革新的殺菌技術を利用した果汁製造ラインの実用化
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清涼飲料水は、食品衛生法により加熱殺菌の基準が定められている。食品中を電気が流れることで食品自体が発熱することに加えて電気的な殺菌作用が生じ、これらの相乗効果により、食品中の微生物を迅速かつ効率的に殺菌できる技術を開発した。この技術は、従来の加熱殺菌よりも食品が熱にさらされる時間が短くなるため、よりよい品質で加工食品を製造することができ、電気を直接食品に通電するため、エネルギー効率が高く生産工場より排出される二酸化炭素を低減できる利点がある。
DNAチップを利用した家畜感染症向け新検査システムの開発
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海外で高評価の和牛に焦点をあて、独自技術の電流検出型DNAチップ技術を活かし「簡単、迅速、正確、安価」にウシの感染症原因微生物を網羅的に検出するDNAチップカードを開発、実現した。ウシの鼻汁、糞便などサンプルごとの検出系を試作、うち鼻汁(呼吸器病)用は既に上市し予防対策などに活用され始めている。この技術は、簡便かつ迅速、高感度に多項目の遺伝子を検出することから家畜感染症の浸潤状況調査や早期発見、複合感染発見をより容易に実現し、生産性の向上に貢献するものと期待される。
【農林水産技術会議会長賞】(農林漁業者部門)
革新的な加工技術の開発による安納いものブランド化
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焼きいもの香ばしい香りを好む消費者ニーズに応えるため、種子島産の炭を利用した炭火焼による連続式焼き芋製造装置を開発し、冷凍焼き芋としての製品化のみならず、焼き芋ペーストの製造技術も開発した。県内外の大手食品企業と提携し、ペーストを利用したスナック及び安納いもグラッセなどの商品化が進み、種子島産安納いもが広く消費者に認知されるようになり、種子島産安納いものブランド化が図られた。
【JATAFF会長賞】
トプラメゾン液剤による飼料用とうもろこし除草技術の開発
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飼料用とうもろこしでは登録のある除草剤が少なく、難防除性の外来雑草による被害が深刻であった。そこで、トプラメゾンを有効成分とするアルファード液剤を茎葉処理除草剤として飼料用とうもろこしへ適用する技術を確立した。この技術は、資料畑において中には3mを超える高さに成長するオオブタクサに卓効を示し、輸入飼料が高騰する中、国内で安定した飼料生産を可能にする技術として畜産産業への貢献が期待される。
氷点濃縮製法による「明治おいしい低脂肪乳」の開発
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脱脂乳と水の凝固点の違いを利用して水だけを凍らせ、氷を除去することで、熱をかけずに濃縮する技術を見出し、乳の新鮮なおいしさを失うことなく濃縮できる製法(氷点濃縮製法)を開発した。また、脱酸素処理をすることで加熱による酸化を抑制する技術を併用し、乳の新鮮なおいしさを最大限に生かした商品を開発した。
低脂肪乳や栄養強化乳の物量が減少している中、氷点濃縮製法による新商品「明治おいしい低脂肪乳」は、市場の低脂肪乳・栄養強化乳と比較して重量換算で70%程度高い実勢価格にも関わらず、そのおいしさが認められ取扱い店舗数は増加。
令和元年度(第15回)若手農林水産研究者表彰
農林水産業その他関連産業に関する研究開発に関して優れた功績をあげた若手研究者に対して、農林水産技術会議会長賞を授与するとともに、受賞者代表による受賞講演を実施します。
動物由来薬剤耐性菌の実態解明とその対策に関する研究
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動物由来薬剤耐性菌・耐性遺伝子の分布が動物に対して抗菌薬を使用することと関連することを科学的なデータで示した上で、家畜を対象とした獣医師向けの抗菌剤使用に関するガイドブックを作成し、抗菌剤の慎重使用の促進に貢献した。加えて、農場からの動物由来薬剤耐性菌の拡散防止及び食品の安全対策につなげることを目的として、耐性菌対策としての家畜を取り巻く環境の重要性を証明し、薬剤耐性対策に貢献した。
林相の違いに由来する林内の雨・土砂動態に関する研究
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森林の表土保持機能の評価のために、森林の中で降る雨粒を連続測定できるレーザー雨滴計を開発し、多様な観測・実験・理論構築を通して、森林での土壌侵食のメカニズムを解明した。また、枝や葉から滴下する大粒の雨の地面衝突が土壌侵食を加速するプロセスを明らかにし、林相(樹種、森林構造、林齢)による侵食されやすさの違いを示した。
森林研究・整備機構 森林総合研究所 主任研究員
南光 一樹 氏
牛ルーメン微生物を用いた高効率バイオガス生産技術の開発
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と畜場廃棄物である牛のルーメン(第一胃)液を活用し、リグノセルロースからの高効率バイオガス生産(メタン発酵)技術を開発した。また、その残さ液が、肥料になるとともに植物病原菌の生育を抑制することを明らかにした。難分解のリグノセルロースをメタンとして活用後、肥料として土に還す本研究は、資源循環社会の構築を加速させる成果である。
石川県立大学 生物資源工学研究所 助教
馬場 保徳 氏
侵入警戒を要するウイロイドの防除に関する研究
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ナス科植物の重要病害であるポスピウイロイドの防除マニュアルを作成し、発生地のウイロイド根絶に成功した。また、同属のジャガイモやせいもウイロイドの国内初発生を確認し、その宿主範囲・病徴等を明らかにし、さらにウイロイドの主な侵入経路である種子伝染機構を世界で初めて解明することで、種苗検査体制の強化に寄与した。
農研機構 野菜花き研究部門 主任研究員
松下 陽介 氏
LED光照射によるウンシュウミカンの腐敗軽減に関する研究
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収穫後、ウンシュウミカンへの青色LED光照射による青かび病菌・緑かび病菌(貯蔵病害菌)の菌糸伸長抑制作用、ミカン果実の病害抵抗性付与、腐敗軽減効果について明らかにした。また、実際のカンキツ貯蔵庫で活用できる装置開発(青色LEDカートラック、壁面設置LED)を行い、現地貯蔵庫にてLED貯蔵の効果を実証し、普及に結びつけた。
静岡県農林技術研究所 果樹研究センター 上席研究員
山家 一哲 氏