SEMINARセミナー
【M120】15:20~16:50 メインステージ
バイオテクノロジーが切り拓く未来

「酸味が甘味に変わるミラクルリントマト」事業化への取り組み

(株)インプランタイノベーションズ 取締役 研究開発部長

寺川 輝彦

ミラクリンは、西アフリカ原産のミラクルフルーツ(果実)に含まれるタンパク質で、それ自体には甘味はありませんが「酸味を甘味に変える」不思議な作用を持っています。しかし、ミラクルフルーツは熱帯原産の果樹であるために大量に安定して栽培することは難しく、高価な食品素材となっていました。そこで、筑波大学と当社は遺伝子組換えを利用したトマトによるミラクリン生産技術を開発しました。ミラクリンの味覚修飾作用は、糖分の摂取を減らすことが出来るなど、低カロリー甘味料や生活習慣病予防への応用が期待されています。

ゲノム編集で養殖魚の育種を加速する

国立大学法人京都大学大学院 農学研究科 応用生物科学専攻 
海洋生物機能学分野 助教

木下 政人

近年、世界的に魚介類の消費量が増加し、生産性の向上や高品質の魚介類が求められています。日本は高い養殖技術を有していますが、養殖魚では家畜や作物のような育種や品種改良が行われていません。
そこで、ゲノム編集技術を使い、迅速な養殖魚育種を目指しました。
マダイとトラフグを用い、筋肉量の増加に関わる遺伝子、食欲に関わる遺伝子をCRISPR/Cas9 法により破壊しました。その結果、マダイでは筋肉量が約1.5 倍に増加した系統を2 年で作出することに、トラフグでは通常の2 倍の速さで成長する個体を作製することに成功しました。

安全で健康によいジャガイモをゲノム編集で創る(SIPジャガイモ創生グループ)

国立大学法人大阪大学大学院 工学研究科 生命先端工学専攻 生物工学コース 
細胞工学領域 教授

村中 俊哉

ジャガイモの芽や緑になった皮には、ソラニンなどの毒物がたまります。このような毒物が蓄積しないように、栽培、栽培後の保管、流通、販売の過程で多大なコストがかかっていますが、これまでの通常の育種では毒物を除去することができませんでした。私たちは、ソラニンの生合成に関わる遺伝子を明らかにし、その遺伝子をゲノム編集することによりソラニン蓄積量が大幅に減少したジャガイモを創る技術を開発しました。さらに、ゲノム編集により、芽が伸びるのを抑え、毒物が薬の成分に変わったジャガイモの可能性についてもご紹介します。

【C101】10:30~13:30 セミナールームC
生産現場の夢トーク2016
~都道府県普及指導機関が構想する生産現場の課題解決を紹介し、取組に協力いただける企業・研究機関等を募集します~

(1)スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)から稲を守る技術

千葉県農林水産部担い手支援課 専門普及指導室 主席普及指導員

大谷 徹

千葉県九十九里沿岸の水田では、移植直後の水稲苗がスクミリンゴガイに食害され、中には収量が1割にも満たない水田もみられます。用排水路を介して発生地域が拡大しており、用排水路での駆除方法や貝を水田に入れない方法の開発を希望します。また、スクミリンゴガイは5 月から稲体や用排水路の壁などにピンクの卵を産みます。産卵後早いうちに水面に落とすと孵化できない特徴を生かした駆除について、ご提案頂ける機関を募集します。

(2)イノシシ被害を防ぐ電気柵の省力的な管理法

千葉県農林水産部担い手支援課 専門普及指導室 主席普及指導員

大谷 徹

千葉県における野生鳥獣害の被害は拡大しており、特にイノシシによる被害が多いです。そのため、水田や畑の周りに防護柵を広域的・効果的に設置することを進めています。その距離は毎年200 ~ 300km 以上に及びます。しかし、柵の多くを占める電気柵では、漏電しないようにするため柵の下の雑草管理が必要不可欠で、年3回~ 4 回もの除草作業を行っています。電気柵のワイヤーを感知しながら自動で除草してくれる機械はできないでしょうか。連携いただける機関を募集します。

ICTを活用した効率的な野生獣被害対策の構築

八幡平農業改良普及センター 主査農業普及員

小原 善一

岩手県では、野生獣による農作物被害額が増加しており、費用対効果の優れた電気柵等の対策の普及が急務です。当普及センターでは、電気柵設置に係る技術的課題への対応や人材育成に取り組んでいますが、圃場に設置したトレイルカメラの見回りやデータ回収、電気柵の稼働状況の確認等に時間を要し、管理運営上の課題となっています。そこで、トレイルカメラや電気柵の稼働状況等を遠隔で確認できるシステムを構築し、さらに将来これらの情報を農業者が共有できるネットワークづくりを考えているので、連携いただける機関を募集します。

緑肥「ヘアリーベッチ」を活用した有機稲作技術の確立

加古川農業改良普及センター 普及主査

初田 いづみ

兵庫県東播磨地域では、マメ科植物「ヘアリーベッチ」を緑肥として、水稲をはじめとした環境にやさしい農産物生産を進めています。今後は「ヘアリーベッチ」が持つと言われているアレロパシーを活かし、特に水稲での減農薬栽培、有機栽培に取り組みたいと考えています。そこで①アレロパシーを活用した水稲除草技術の確立、②「ヘアリーベッチ」を活用した農産物(米、大豆、そば、ハチミツ等)のブランド化について提案、連携いただける方々を募集いたします。

非破壊検査技術を用いたレタスの球内腐敗と害虫検出装置の開発

香川県西讃農業改良普及センター 園芸部門・副主幹

小河原 良文

レタス産地では、消費者に望まれるレタスの計画的かつ安定生産を目指しています。しかし、異常天候が続くと消費地から結球葉内の腐敗や、球内に侵入しているヨトウムシ等のクレームが多くなります。そこで、消費者から信頼を得るために外観では識別が困難な内部腐敗や侵入害虫を非破壊で検出する技術を実用化することが必要です。管内JA で導入予定の高能率レタス選別包装システムにこの検出機能を付加したいと考えており、連携して課題解決に取り組んでいただける機関を募集します。

北海道における加工用トマト生産拡大に向けて必要なこと

石狩農業改良普及センター 地域第一係 専門普及指導員

高田 和明

ジュース、ケチャップ、ソースやホールトマト等の原料となる加工用トマトは、北海道でも取組が増えつつあるが、現状は手作業による収穫がほとんどで、北海道の特徴を生かした大規模な作付には至っていない。そこで、収穫に関わるいくつかの問題を解決し、栽培面積や所得の拡大を図るとともに、輪作体系への導入を進めることで、持続的農業を目指したい。
このため、加工用トマト収穫の省力化・機械化、トマト実需者(加工業者)、種苗・育種関係者など、連携いただける機関を募集します。

夢ある「SAGA酒」山田錦生産基地 プロジェクト“X”

佐賀県 杵藤農林事務所 藤津農業改良普及センター 技術指導係長

上瀧 孝幸

佐賀県藤津地区は、2011 年に世界最大規模のワインコンテストIWC で世界一の名誉チャンピオン・SAKE に輝いた「鍋島 大吟醸」が生まれた県下有数の酒どころです。「美味しい酒は、米づくりから」の先人の教えを実現するために、ライスセンターを核として作業受託法人及び生産法人と連携し酒造好適米「山田錦」などの生産体制の再構築を進めています。そこで、ICT を活用し、地力に応じた適正な施肥、収穫・荷受け時のタンパク値毎の仕分け、水稲生育中期に株元から刈り取る機械など、連携いただける機関を募集します。

農地・農業用施設を次の世代へ引き継ぎ,農業・農村を元気に!

鹿児島県大島支庁 農林水産部農政普及課(瀬戸内町駐在)農業技師

中島 健吾

鹿児島県大島郡瀬戸内町は、温暖な気候を活かした果樹生産と、鹿児島県の主要作目のひとつである肉用牛が盛んです。また、新規就農者も近年増えています。しかし、瀬戸内町では、①新規就農者の農地確保・施設整備が進まない、②高齢化によって空き施設・耕作放棄地が発生、が問題となっています。そこで、①町独自の「資産バンク」の設立、②不動産業と連携した住居の確保、③資産の貸付体制の整備、を重点的に行い、「新規就農者の定着率100%」と「空き施設及び耕作放棄地0」を目指し、瀬戸内町の農業・農村を元気にしていきます!

【C115】14:00~15:30 セミナールームC
事業化促進研究

高耐久通気性ポーラスベッドを用いたイチジク隔離ベッド栽培技術の開発

大有コンクリート工業株式会社 技術部 主任研究員

津田 博洋

近年、イチジク栽培では土壌伝染性の株枯病の発生が問題となっています。対策として、通気性や排水性に富むパーライトやALC(軽量発泡コンクリート)破砕屑を使用したイチジク隔離栽培に適した、コンクリート製としては軽量(1 ユニット15kg)なポーラス(多孔質)ベッドを開発し、イチジクの実証栽培を行い栽培条件を確立していますので、その取組を紹介します。

エリア内 自律走行式小型エンジン草刈機の商品化

三陽機器株式会社 技術部 部長

守安 利文

農業者が予め設定したエリア内を自律走行し、さらに40 度傾斜地においてリモコン操縦が可能な小型エンジン草刈機を開発して、農業者の草刈作業負担軽減を図ります。この目的のために、小型エンジン草刈機試作機の性能テスト、および自律走行と40 度傾斜地リモコン走行の安全走行実証テストを実施しており、その取組を紹介します。

自動搾乳牛舎における省力・精密飼養管理システム及び技術の実証

オリオン機械(株) 酪農事業本部

渡辺 英敏

個体情報(乳成分やBCS 等)の収集システムなどの開発を行い、搾乳機器や給飼機器などの自動化システムで更に精度の高い乳牛飼養管理を可能とし、酪農経営の生産コスト低減につなげます。具体的には、①個体別情報の取得システムの開発、②採食向上技術の開発、③生乳と地中熱回収による温冷コントロールシステムの開発を行っており、その取組を紹介します。

コストを低減した活魚輸送技術(活魚の麻酔コンテナ輸送システム)

マリンバイオテクノロジー(株) 代表取締役

中島 良一

新提案の活魚麻酔技術により、低コストでの長距離輸送が可能となるシステムを実現します。具体的には、活魚の収容率を倍増してコストを低減する「麻酔コンテナ」の実用機を製造しています。また、完全閉鎖循環式畜養施設の低コスト設置と省エネ型運転により、天然活魚を生産地から消費地へ安定供給するシステムを構築しており、その取組を紹介します。

木質バイオマス蒸気ボイラーと外燃型蒸気ロータリー発電エンジンによる小規模独立発電&熱利用システムの研究開発

村上精機(株) 代表取締役

村上 周三

農地内で熱と電気を作り利用できる2 つの新技術である、①小規模木質バイオマス蒸気ボイラー高含水率灰成分含有の農業残渣等未利用燃料対応モデル、②低圧少蒸気量に特化した高耐久型蒸気ロータリー発電エンジン。これらの相乗効果を用いた独立型システムの開発計画と施設園芸向けの新規農業実証試験を行ってきた取組を紹介します。

豆乳を原料とした植物性クリームの社会実装

太子食品工業株式会社 事業統括本部 技術開発室

井戸川 詩織

豆乳はコロイド分散系であり、pH が低下すると高密度コロイド凝集体が生成し、その状態で遠心分離を行うとオイルボディがクリーム状の沈殿画分として分離されます。このクリームを用いて、健康およびナチュラル志向を強めるニーズに手軽に応えられる、豆乳新市場に向けた新製品を開発しており、その取組を紹介します。

【C123】16:00~16:30 セミナールームC
アフリカにおける食料安全保障 
-ケニア栄養改善プロジェクト-

Bioversity International

森元 泰行

バイオバーシティ・インターナショナルは、農業に関わる生物多様性を専門とした国際研究機関として、育種活動のみならず農業の多様性によってもたらされる多くの利益を視野に入れた研究を通じ、食料問題や気候変動適応など地球規模課題に取り組んでいます。今回の講演ではアフリカの農村を対象に、地域農産物の多様性を利用した栄養・生活改善活動の概要を紹介するとともに、今後の新たなビジネスマッチングの創出のため、民間企業連携により事業化した取組や、来年度から取り組む新事業について紹介します。

【M201】10:30~11:30 メインステージ
食料生産地域再生のための先端技術展開事業

農村の未来を見据えた新形質米による価値創造

国立研究開発法人農研機構 東北農業研究センター 生産基盤研究領域・任期付研究員

安江 紘幸

津波被災地の岩手県三陸沿岸部は、小区画不整形な水田と夏季冷涼な気象条件を特徴としており、農地集積を通じた経営規模拡大によるコスト低減が困難です。加えて、半農半漁地域では、磯焼けによる漁業収入の減少が深刻となるなど、収益の確保が課題となっています。こうした課題解決に向けて、本講演では、未来を見据えた中小区画水田向け直播栽培技術や安定栽培技術、直播適合品種などの新技術・新品種の導入によるコスト削減及び付加価値化を目指した「中小区画土地利用型営農技術の実証研究」の成果について紹介致します。

「北限のゆず」のブランド化にかける想い

岩手県農業研究センター 技術部果樹研究室長

佐々木 真人

岩手県農業研究センターでは、東日本大震災からの早期復興を目指し、先端プロ事業による実証研究を、被災地の一つである陸前高田市を中心に、果樹農業について展開しています。当該地域は、ゆず栽培の可能な北限と考えられ、古くから地域に親しまれています。震災復興を契機に「北限のゆず」を復興のシンボルとして特産化の動きが始まっており、本講演では、ブランド化に向けた寒冷地における安定生産技術などの先端技術を取り入れた実証研究の成果について紹介します。

先端技術でブランドカキを作ろう!
~被災地で誕生した「あまころ牡蠣」の軌跡~

宮城県水産技術総合センター気仙沼水産試験場 普及指導チーム技術主幹

山内 洋幸

宮城県のカキ養殖は東日本大震災により甚大な被害を受けましたが、震災前の生産量の約4 割まで復旧を果たしました。その一方で、生産物の市場競争力回復や生産者の収益力アップなど、被災地の活力を創出する新たな取り組みが不可欠になっています。本講演では、こうした課題解決に向けて、先端技術を取り入れることで誕生した未産卵一粒カキである「あまころ牡蠣」のこれまでの軌跡を紹介します。

スルメイカの高鮮度保持技術を使った地域漁業の6次産業化

国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産工学研究所 研究員

田丸 修

漁業、加工、流通、販売、資源管理といった様々な要素がお互いに影響し合って水産業は構成されています。私達は水産業を様々な要素が連動して作用するシステムとして捉えて、全体の効率化に向かうには何をどうすれば良いのかを研究しています。本講演では、船上での活〆や過冷却シャーベットアイスなどの先端的な高鮮度保持技術を用いた地域漁業の六次産業化の事例について紹介します。

【M205】11:40~12:10 メインステージ
異分野融合共同研究(日本食分野)

世界の健康に貢献する日本食の科学的・多面的検証

国立大学法人京都大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌・栄養内科学 特定助教

池田 香織

日本食の健康への効果をより明確に国内外に発信するため、科学的な検証を行っています。歴史的観点、海外や国内の日本食の現状などを踏まえ、まずは日本食の特徴として、栄養素のバランス、うま味の軸である「だし」、発酵食品を中心に取り上げ、動物やヒトにおける検討を行いました。さらに、おいしさを客観的に評価するための取り組みも行っています。拠点研究機関を中心に補完研究機関の成果も含めてご紹介します。

【M217】14:30~16:30 メインステージ
動き出す農林水産AI・IoT~現状とその可能性~ 

人工知能の農業活用

東京大学大学院 特任准教授

松尾 豊

人工知能の最新動向、特にディープラーニングを取り巻く状況について解説し、今後の研究の進展、産業における活用可能性について概観する。また、ディープラーニングを活用した「眼をもった機械」が与えるインパクトを考察し、特に農業分野においての活用の可能性についても解説する。

農業IoTの課題とドコモの果たす役割について

NTTドコモ株式会社 エグゼクティブプロデューサー

上原 宏

農業iot は、センサー、ネットワーク、クラウド、機械学習など様々な要素技術が複合したシステムであり、その実現には多様な事業会社の緊密な連携が不可欠である。こうした複雑なシステムを農業生産の現場に使いやすいサービスとして実現する上でNTT ドコモがどのように貢献できるかについて紹介する。

先導プロジェクトにおける収穫ロボットの開発

立命館大学 教授

深尾 隆則

農業現場で未だに多くの人手をかけて行っている収穫作業の自動化に向けて、複数種の果樹において共通的に使用可能な果実収穫ロボット及び野菜生産の労働ピークを軽減させる露地野菜の収穫ロボットの開発について紹介します。

ファームノートの挑戦。Internet of Animalsで切り拓くこれからの農業

(株)ファームノート 代表取締役

小林 晋也

ファームノートは世界の農業の頭脳を目指す農業IT ベンチャーです。人工知能を活用して牛の最適管理ができるウェアラブルデバイス「Farmnote Color」を開発し、北海道の基幹産業である農業を支えています。Farmnote がどのようにクラウドを活用してユーザーを拡大したのか、そして今取り組んでいる「Internet of Animals」事業についてもご紹介します。

匠の技の形式知化

内閣官房IT総合戦略本部 副政府CIO

神成 淳司

現在、持続的な農業の確立において喫緊の課題となっている、熟練農業者のノウハウの形式知化について、AI(アグロ・インフォマティクス)農業における「匠の技」の学習システムの取組、ビッグデータの活用を含めた農業分野におけるICT 利活用の可能性や実用性、そして現在政府全体で進めている農業ICT における標準化の取組について紹介します。

SIP「次世代農林水産業創造技術」におけるスマート農業の成果及び今後の展開について

国立大学法人北海道大学大学院 教授

野口 伸

内閣府SIP「次世代農林水産業創造技術」では、平成26 年度より水田農業におけるロボット技術、ICT、ゲノム等の先端技術を活用し、環境と調和しながら、超省力・高生産のスマート農業モデルの実現を目指した技術開発を進めています。今回は、本取組の成果とともに今後の展開について紹介します。

産総研における人工知能研究と農業への展開について

国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員

永見 武司

産業技術総合研究所では、国内外の大学、企業、公的機関と連携して、実社会のサービスから得られる大規模データを活用しながら先進的な人工知能の研究開発を行っています。本日は産総研における人工知能研究の取組と農業への横展開の可能性について紹介いただきます。

【C201】10:20~11:40 セミナールームC
農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業の研究成果紹介 農食事業紹介

麦類で増加する黒節病などの種子伝染性病害を防ぐ総合管理技術の開発

国立研究開発法人農研機構 中央農業研究センター 病害研究領域上級研究員

井上 康宏

麦類では、黒節病などの種子伝染性病害の増加により、生産物の減収や品質低下が問題となっている。そこで、黒節病を中心に防除技術開発を行った。その結果、金属銀水和剤や塩基性硫酸銅水和剤による種子消毒、塩基性硫酸銅水和剤の生育期散布、さらに雨よけ栽培や晩播を組み合わせることにより、原原種圃場から採種圃場まで段階に応じた、黒節病菌による汚染の低い種子を生産するための防除体系を構築すると共に、黒節病汚染種子の検定方法を開発した。また、糸状菌性の種子伝染性病害に対する効果的な種子消毒方法も明らかにした。

クリのくん蒸処理から脱却するクリシギゾウムシ防除技術の開発

国立研究開発法人農研機構 果樹茶業研究部門 企画管理部企画連携室長

井原 史雄

クリ果実のクリシギゾウムシに対する臭化メチルくん蒸は平成25 年を最後に全廃され、代替技術の確立が求められていた。そこで、クリシギゾウムシに対する臭化メチル代替技術について、栽培管理や貯蔵段階における解決すべき事項を整理した。栽培管理では、発生生態に基づく効率的な防除時期・回数の解明、収穫後の処理では、温湯処理における処理後の簡便化、氷蔵処理を利用した有利販売の実証に取り組んだ。得られた成果は、様々な生産地域の条件に合わせ、防除技術を適切に選択できるようマニュアル化を行った。

ジャガイモシロシストセンチュウの防除技術の開発

国立研究開発法人農研機構 北海道農業研究センター 生産環境研究領域線虫害グループ長

奈良部 孝

北海道で新規確認されたジャガイモシロシストセンチュウ(Gp)の国内におけるまん延を防止し、ばれいしょの安定的な生産を図るため、対抗植物やふ化促進物質等の根絶に向けた候補技術を選定・評価した。また、Gp 抵抗性遺伝子を識別するマーカーを用いて国内のばれいしょ遺伝資源を評価し、抵抗性遺伝子を有する可能性のある品種・系統を選定した。さらに、Gp の迅速で簡易な診断法を開発し、圃場内での分布を明らかにすると共に、発生したGp の由来を類推した。

【C205】11:40~12:15 セミナールームC
農林水産省におけるレギュラトリーサイエンスの取組

農林水産省 消費・安全局 食品安全政策課 食品安全技術室 レギュラトリーサイエンス対応推進班 課長補佐

栗山 泰

農林水産省は、科学的な根拠に基づく行政施策・措置の決定を推進するため、食品安全、動物衛生、植物防疫等の分野で、レギュラトリーサイエンスを活用しています。
本セミナーでは、農林水産省におけるレギュラトリーサイエンスに関する取組について、具体例を交えて説明するとともに、農林水産省が必要としている研究課題について情報提供します。

【C211】13:00~15:20 セミナールームC
農林水産業・食品産業科学技術 研究推進事業の研究成果紹介

酵素剥皮技術の利用を核としたカンキツ果実新商材の開発と事業化方策の策定

国立研究開発法人農研機構 食農ビジネス推進センター 主任研究員

野口 真己

国産カンキツ果実の生産と消費の拡大を目的として、酵素処理で果皮を除去する加工法である酵素剥皮技術を核として、果実新商材の開発と事業化を目指した取組を紹介する。まず、本技術の円滑な新規導入の実現を支援するため、酵素剥皮加工適性の観点から、多様なカンキツ品種群を類型化し、タイプ別に酵素剥皮加工の基本処理条件を設定した。さらに、加工を前提とした無種子化等の栽培処理、剥皮加工後の品質保持について検討した。カンキツ果実の酵素剥皮加工の実施事例が増えつつあり、さらなる技術の改良が今後期待される。

高機能性ウメ品種「露茜」の需要拡大を目指した安定生産技術並びに加工技術の開発

和歌山県果樹試験場 うめ研究所 主査研究員

城村 德明

「露茜」の生産拡大に向けた栽培技術の確立により原料果実の安定供給を図るとともに、優良形質である赤色色素や機能性を最大限活用する加工技術を開発し、付加価値の高い新規の梅加工品開発をめざす取り組みを実施した。
その結果、生産者の所得向上のための栽培管理マニュアルを作成し、簡易追熟法により商品製造メーカーへ高機能性果実原料の安定供給が可能となり、それらの果実を用いた食品素材の開発および商品化を行った。

国産赤身型牛肉である乳用種牛肉の輸入牛肉に対する差別化技術の開発

国立研究開発法人農研機構 畜産研究部門 畜産物研究領域 食肉品質ユニット長

佐々木 啓介

国産の乳用種牛肉は和牛と比較していわゆる「赤身型」の牛肉であり、典型的な赤身型牛肉である輸入牛肉と類似した外観であることから競合関係にあると考えられており、貿易のさらなる自由化によって大きな打撃を受けることが懸念されている。そこで演者らは乳用種牛肉と輸入牛肉の理化学特性と客観的な官能特性の違いを調べ、両者には「食べてわかる違い」があることを明らかにした。また、両者の間には消費者嗜好にも違いがあること、および消費者の中には「乳用種牛肉と特に好む消費者群」が一定数存在することを見いだした。

東北地方海岸林再生に向けたマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ種苗生産の飛躍的向上

国立研究開発法人森林総合研究所 東北育種場 育種課長

織部 雄一朗

東日本大震災により東北・仙台湾沿岸を中心に1,000ha 以上の海岸防災林が壊滅した。被災地での生活や営農の復興のため、潮・風・飛砂への防備機能を持つ海岸防災林の再生が必要であり、500万本以上の苗木が必要とされている。そこで、東北で被害が拡大しつつあるマツ材線虫病に強い抵抗性クロマツについて、種子生産性の飛躍的な向上技術、寒冷地でのさし木増殖技術、クローン苗木の新たな大量生産技術と温暖地産種子・苗木の寒冷地への導入技術を開発・実用化し、海岸防災林の再生現場に苗木を安定供給するシステムを構築した。

大規模崩壊発生時の緊急調査技術の開発

国立研究開発法人森林総合研究所 森林防災研究領域 チーム長

岡田 康彦

  • 大規模崩壊を対象に、有人航空機からの撮影画像を用いたSfM 解析の結果と航空LiDAR データの解析結果の比較から、崩壊土量および侵食量を定量化する手法を開発した。また、複数時期のALOS PALSAR データの干渉SAR 解析と航空写真判読から、崩壊前後の斜面変状の推移を把握する手法を開発した。
  • 崩壊現場での物理探査、土質試験、数値解析技術を融合し、崩壊メカニズムを解明し土砂流出リスクを評価する技術を開発した。
  • 大規模崩壊発生時の緊急調査法に関してマニュアルとしてまとめた。

国産材を高度利用した木質系構造用面材料の開発による木造建築物への用途拡大

国立研究開発法人森林総合研究所 複合材料研究領域複合化研究室 室長

渋沢 龍也

樹木は炭素固定効果を持つことから、低質な木質資源から製造される木質系面材料は、地球温暖化防止に貢献できる。特に、木造建築物に利用できる構造用面材料は使用量・耐用年数の観点から、大きな二酸化炭素吸収効果を期待できる。そこで、林地残材等、低質な国産材を利用し、木造建築物の構造部材に使用可能な面材料を開発した。その利用技術を確立することで国産材の用途拡大を図り、木材自給率を向上させることを目的とした。

スギの原木サプライチェーンの最適化と微粉砕物を利用した高付加価値製品開発

秋田県立大学 木材高度加工研究所 教授

高田 克彦

スギに代表される針葉樹人工林の健全な維持・管理と木質資源としての利用は我が国の重要な成長戦略の一つと考えられている。本研究では、スギの総合的利活用を目指したサプライチェーンの最適化と新規産業創出を目的として、バイオマス利用を含めたスギ材の全量利用を効率的に推し進めるための資源量把握及び供給ポテンシャルの推計手法の開発及び低コスト安定供給システムを構築するとともに、微粉砕物を利用した高耐久および機能性木材―プラスチック複合材料(WPC)を開発した。

【M301】10:20~10:50 メインステージ
異分野融合共同研究(ウイルス分野)革新的人工核酸結合タンパク質を用いたウイルス対策技術の確立と社会実装

国立大学法人岡山大学大学院 自然科学研究科 教授

世良 貴史

ウイルスは、ヒトだけではなく、家畜や家禽類にも感染し、様々な病気を引き起こしますが、これは社会的な不安と共に経済・文化的な大きな打撃を私達の社会にもたらします。これまで、ウイルスに対して様々な対策が講じられて来ましたが、依然としてその脅威は衰えることがありません。本講演では、世界的に切望されているウイルス感染を防ぐ効果的・革新的な技術の開発について、「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」のウイルス分野の拠点研究機関である本学及び補完研究機関全体の取組とその成果等を紹介します。

【M303】10:55~11:25 メインステージ
異分野融合共同研究(高機能性素材(ナノセルロース)分野)農林水産物由来のナノ材料の創成と応用の開拓

国立大学法人信州大学 先鋭領域融合研究群 カーボン科学研究所 特任教授

野口 徹

農林水産由来物質およびこれらの残渣の工業利用への試みは、ナノカーボン技術、高分子ナノテクノロジー技術との融合などによる新材料、新技術の開発を目指しています。例えば電気二重層キャパシタ電極、ナノセルロースを鋳型とするCs イオン吸着体、およびTEMPO 酸化セルロースとカーボンナノチューブのナノ・ナノ系ゴム複合体は、並外れた特性を有することを見出しました。これらの産業界から注目を集めている取り組みの概要を紹介します。

【M305】11:30~12:00 メインステージ
異分野融合共同研究(情報インフラ(ICT)分野)

農業情報インフラの社会実装

国立大学法人名古屋大学大学院 情報科学研究科 教授

北 栄輔

「ICT 活用農業 事業化・普及プロジェクト」では、農学に情報学等の異分野の技術を融合する農業ICT を通して、農作業の軽減や農業収入の増加につながるサービスの開発を図ります。
そのための農業情報インフラとして、拠点研究機関では第1 層(センシング層)、第2 層(基盤情報サービス層)、第3 層(ユーザサービス層)の3 層からなるプラットフォームを構築しています。
本発表では、このようなプラットフォームおよびそれらを活用した農家に役立つ様々なサービスについて、社会実装に向けた取組みを紹介します。

【M315】14:00~15:30 メインステージ
先端を行く農業ベンチャーの取組

植物の声を聴く、栽培環境制御のための植物診断。

PLANT DATA JAPAN(株)(愛媛大学発ベンチャー) 代表取締役最高執行責任者

北川 寛人

愛媛大学の研究成果を技術シーズとし、植物の生育状態の数値化・情報化とそのデータを栽培管理に活かすためのプラットフォームを国内外で提供しています。
安定生産や収量増加から、高付加価値化や病害虫検知まで、技術と事業の現状と今後の展開を紹介します。
センシング技術による植物のリアルタイムな環境応答の見える化を通じて、人間と植物の新しい関係の構築を志向する企業です。

農業に休日を!! -Grow with IoT-

(株)ルートレック・ネットワークス  代表取締役社長

佐々木 伸一

IoT とクラウドを活用してかん水・施肥作業を自動化する次世代型の養液土耕システム等を提供する企業です。基盤技術は明治大学黒川農場との産学連携により開発されたものであり、この技術の特徴や現在の取組の状況、今後の展開などについて紹介します。

異分野融合の研究を活かして、農業の問題解決に取り組む意義

(株)SenSprout  マネージャー

菊池 里紗

SenSprout 社はプリント技術を用いた低価格な水分・温度センサーを用いて、世界の植物栽培における水利用の最適化を目指しています。東京大学工学部の研究を元にビジネスをスタートさせ、現在も工学部ならびに農学部と共同して技術の開発・改良を行っています。「なぜ工学部の技術で農業の問題に取り組むのか」をはじめ、現在の取り組みの状況や今後の展開について紹介します。

データ*次世代農業~データを活用した経営の見える化と養地育成の取り組み~

テラスマイル(株) 代表取締役社長

生駒 祐一

大規模農園(施設園芸)の再生実績をもとに、データ分析による農業経営を行う、少しユニークなICT コンサルティングする企業です。九州の自治体や農協、普及センターとタッグを組み、データやICT を活用した競争力のある新しい営農・普及活動を支援しています。
出荷実績や、温湿度センサーなどのデータ等を分析し、分析結果を農業経営に有効なグラフや数値に見える化し伝えることで、稼げる農業・産地経営・部会運営を提案します。事業の特徴や取組状況、今後の展開などについてご紹介します。

【C301】10:30~12:10 セミナールームC
農林水産業・食品産業科学技術 研究推進事業の研究成果紹介 農食事業紹介

脂肪酸製剤を用いた油脂の低カロリー化による高付加価値食品の製造

(学)龍谷大学 農学部 教授

伏木 亨

油脂は食品の美味しさを左右する鍵となる要素であるが高濃度の油脂を含む食品は肥満や健康の面で問題が残る。油脂の美味しさと高カロリーの二律背反する問題を解決する目的で、油脂の口腔内シグナル部分とカロリー部分を分離し、低カロリーで嗜好性の高い油脂食品の開発を試みた。油脂の口腔内シグナルは脂肪酸の化学刺激による味覚・嗅覚刺激によってある程度充足できる。油脂の口腔内刺激のみを脂肪酸で付与できる脂肪酸製剤付与によって、油脂含量を低減して低カロリー化したアイスクリームなどの食品を実用化した。

高齢・障がい者など多様な主体の農業参入支援技術の開発

国立研究開発法人農研機構 農村工学研究部門 農地基盤工学研究領域

石田 憲治

高齢者や障がい者らが農作業を安全に担うための機器開発・改良や作業環境改善に取り組みました。水量調節機構を追加して作物生長に合わせてかん水する省力的水管理技術、車椅子利用を想定したブドウ栽培技術、耕深変動の軽減策や減速機構の開発で走行安定性と安全性を高めた耕耘機、太陽光駆動アシストが可能な二輪化運搬車等の開発をはじめ、圃場アクセス改善や作業効率向上のための支援具改良、身体負荷量の測定値による作業者の体力や障がい特性に応じた農作業種類の選択方法など、いずれも低コストで現場に活用できる技術です。

機械除草技術を中核とした水稲有機栽培システムの確立と実用化

国立研究開発法人農研機構 中央農業研究センター 生産体系研究領域 作物栽培グループ長

三浦 重典

有機農産物に対する需要と関心が高まる中で、水稲の有機栽培では「雑草対策」が最も重要な技術的課題といわれています。本報告では、農研機構が公立の試験研究機関や民間企業等と連携して取り組んできた新しい除草機械・ロボットの開発及びこれらを中心に組み立てた水稲有機栽培システムの現地実証試験等に関する状況と成果について紹介いたします。

無病球根の効率的増殖を核とした有望球根切り花の生産流通技術開発

宮崎県総合農業試験場 花き部 特別研究員

中村 薫

ラナンキュラスとダリアは、海外輸出も行われ、生産が急増している球根切り花である。これらの生産上の重要課題である「低い球根増殖率」、「ウイルス等病害」、「短い鑑賞期間」に取り組み、その解決技術を確立した。具体的には、①効率的球根増殖技術開発、②培養ビン内での球根化・保存技術開発、③主要ウイルス・ウイロイドの解明と、その防除法・診断法、3種のウイルス・ウイロイドの同時検定技術開発、④生産者と生花店での日持ち処理剤組み合わせ処理による品質保持技術開発、である。これらは既に普及が始まっている。

【C311】13:00~15:00 セミナールームC
農林水産業・食品産業科学技術 研究推進事業の研究成果紹介

西日本のモモ生産安定のための果肉障害対策技術の開発

国立大学法人岡山大学大学院 環境生命科学研究科 教授

森永 邦久

近年、西日本のモモ産地を中心に、夏季の高温や多量の降水による生理的な果肉障害の発生が大きな問題となっています。本研究では、赤外線を反射する酸化チタンを従来の果実袋表面に塗布した素材「機能性果実袋」を開発し、果実の高温を抑制する技術を確立しました。同時に、土壌水分を制御できる「マルチシート」利用を合わせた総合的対策技術を開発し、これらの技術導入で障害発生を軽減できることが明らかになりました。さらに、外観では判別できないこの果肉障害を「音響振動法」によって、非破壊的に検出する方法を開発しました。

震災後の常磐周辺海域における底魚資源管理技術の開発

国立研究開発法人水産研究・教育機構 東北区水産研究所 資源管理部 任期付研究員

柴田 泰宙

震災が福島県沖の底魚資源量に与えた影響を定量化することを目的とした。開発した統計モデルを2010 年の福島県における漁獲金額上位7 種に当てはめた。震災前の努力量の半分程度にすることで、漁獲量は1.2 ~ 3.4 倍へと増加し、資源量は1.9 ~ 6.4 倍に増加することが示唆された。シミュレーションによって2015 年以降の資源量を予測したところ、上記7 種は震災による休漁効果で増加速度が上昇した種と、本来ならば資源が減少していたはずが休漁効果で増加に転じた種の2 タイプに分けられ、福島県沖が海洋保護区と同じ役割を果たしていると考えられた。

機動的禁漁区設定による底びき網漁業管理システム(e-MPA)の開発

島根県水産技術センター 漁業生産部海洋資源科・研究員

金元 保之

沖合底びき網漁業を対象とし、携帯通信を利用して得たリアルタイムの漁業情報を活用して機動的に禁漁区を決定する管理システム(e-MPA)の開発を行った。主要対象魚は、成魚と若齢魚での価格差が大きく且つ、若齢魚での過剰漁獲が顕著なアカムツとした。e-MPA を運用した結果、若齢魚への漁獲努力量を減少させ過剰漁獲を防ぐことにより、高い資源保護効果が期待でき、将来的な水揚げ金額の増大の可能性も示唆された。

免疫応答を利用したワクチン適用可能魚種の同定

国立研究開発法人水産研究・教育機構 増養殖研究所 魚病研究センター・主任研究員

松山 知正

水産用ワクチンは魚種ごとに認可されるため、ワクチンの認可申請は生産量の多い魚種で行われ、生産量の少ない魚種に利用できるワクチンは殆ど無い。認可の枠を魚種より大きな範囲に拡大できれば、ワクチンがさらに普及し、魚類養殖が多様な魚種で安全且つ計画的に行えるようになる。本課題では、認可枠の拡大に向けた科学的情報を蓄積するために、魚種間で免疫応答の類似性を比較する解析マニュアルを作成した。さらに、ワクチン承認審査機関で認可枠の拡大を検討できるように、本成果を提案した。

ルーメン発酵の健全化による乳牛の繁殖性向上技術の開発

国立研究開発法人農研機構 畜産研究部門 家畜育種繁殖研究領域 繁殖性向上ユニット長

平子 誠

高泌乳牛には能力に見合う栄養価の高い飼料(濃厚飼料)を給与する必要がある。しかし、濃厚飼料を多給するとルーメン発酵に異常を来し生産病のリスクが高くなる。本研究では生産病の発症を防ぐ飼養管理方法の開発を目指し、飼料調製の検討とエンドトキシン拮抗剤等の給与を試みた。その結果、初産牛の給与飼料中非繊維性炭水化物の適正水準を突き止め、ラクトフェリンの給与は泌乳・繁殖両方の成績を向上させ、活性型酵母の給与はルーメン内のエンドトキシン産生菌の割合を減じ、繊維分解菌の割合を増加させることを明らかにした。

画期的WCS用稲「たちすずか」の特性を活かした微細断収穫調製・給与体系の開発実証

国立研究開発法人農研機構 西日本農業研究センター 営農生産体系領域上級研究員

高橋 仁康

WCS(飼料)用稲「たちすずか」は高糖分・高消化性の性質を持ち、畜産農家の需要が高い。25073 コンソーシアムはこれら長稈・多収のWCS 用稲を効率的に収穫・調製可能で、高品質と低コストを両立する微細断収穫・調製・給与体系を実用化した。ワゴンタイプ収穫機の市販化、従来の1/5 の理論切断長で微細断した飼料の高密度輸送と低コストバンカーサイロ調製の実用化、高品質なサイレージ(発酵させた保存性の高い粗飼料)生産、微細断飼料の給与による乳牛の泌乳成績および肉牛の上物率向上等で生産者の所得を向上する。